会員紹介:生野太朗さん

 株式会社シーエー・モバイル 勤務 平成11年合格


<司法書士を目指した理由は?>

 

 司法試験の受験を目指して大学へ入学しましたが、入学直後からすっかり遊び呆けてしまい、早々に挫折してしまいました。大学3年生の時に、さすがにこのままではマズいと思っていたところに、司法書士受験講座の案内を見つけ、軽い気持ちで受講したのがキッカケです。

 

 その講座の先生が、のちに「成年後見センター・リーガルサポート」初代理事長に就任される大貫正男先生で、今から20年以上前の当時、大貫先生から「市民に身近な法律実務家である司法書士こそ、成年後見業務を担うに相応しい存在」と積極的に活動されているお話をお伺いし、自分も将来この分野で社会貢献をしたいと思ったことが、本格的に司法書士を目指すことになったキッカケです。

 

 ただ、大学4年生時の試験では合格できなかったため、大学卒業後に、親のすねをかじりながら就職浪人をしました。しかし、残念ながら、その年にも合格できなかったため、不合格発表後に就職活動を開始し、運よく、株式会社トミー(現:株式会社タカラトミー)の法務で翌年の新卒社員として採用していただき、企業法務の仕事をスタートすることになりました。入社してからも、就業後と休日の時間を使って受験勉強を継続し、幸い入社2年目に合格することができました。

 

 現在まで企業法務の仕事が楽しいため、直近ですぐに独立開業することは考えてはおりませんが、将来的に企業法務を卒業した際には、成年後見業務を中心に社会貢献したいという思いを持っています。

 

<現在の仕事内容・所属組織はどのような職種・業種ですか?>

 

 現在、私は、株式会社シーエー・モバイルで、法務業務を行っています。トミー法務にて5年間勤務した後、現在の会社に転職しました。

 

 シーエー・モバイルは、株式会社サイバーエージェントが最初に設立した子会社で、インターネット広告事業、アーティストのファンサイト事業、占い事業、投資事業を行っています。私が入社した2003年当時は、創立3年、社員60人の小さなベンチャー企業で、管理部門の人数も少なかったため、法務にこだわらず様々な仕事を経験させてもらいました。例えば、経理の決算、主計の予実管理、人事の新卒採用、総務の本社移転をはじめ、およそ管理部門の仕事は一通り経験しました。また、東日本大震災時には、緊急対策本部の事務局長としてリスクマネジメントにも従事し、その後のBCPの作成にも携わりました。

 

 現在は、法務業務のみですが、契約を中心とした法務業務に留まらず、社内規程や稟議管理の内部統制、J-SOXの内部監査、与信管理、株主総会/取締役会事務局、情報セキュリティ、M&A案件のDD等、一般的な企業法務よりは広範な業務を担当しています。

 

 特に、M&A案件のDDでは、数千万から数億円規模の案件がほとんどのため、法律事務所にアウトソーシングすることなく、内製で対応しています。法務でも、総勘定元帳の読み込みまで実施するのですが、過去の経験が大いに活きています。

 

<社内で司法書士の知識が活かされる場面は?>

 

 私が、知識として最も活かせているのは、実は、民事執行・民事保全・供託の知識です。どちらかと言えばマイナーな法律ながら、司法書士試験では立派な受験科目です。

 

 私は、与信管理がメイン業務の一つなのですが、支払遅延が発生し債権回収を行う場面では、最後に回収完了するところまでがミッションとなり、執行の知識が非常に重要になります。また、債務名義の取得に時間を要するときや、債務者へプレッシャーをかけるときに行う仮差押の手続きについては、保全の知識が大いに役立ちます。

 

 少し変わった経験としては、自動車の強制執行や、詐害行為取消権を前提とした仮差押があるのですが、このときにも執行・保全・供託の知識がフル活用されました。

 

 一方、債権回収の場面において、商業登記から代表者の住所を特定のうえ、不動産登記で自己所有か賃貸物件かの確認をし、自己所有だった場合に担保価値がどの程度あるのか調査を行うことがあるのですが、このときに、司法書士の最も得意とする登記知識が役立つことは言うまでもありません。