■司法書士法改正要綱案策定に関する意見募集について

 当協会は、日本司法書士会連合会による司法書士法改正要綱案策定に関する意見募集に対し、以下のとおり意見表明を行いましたので公表します。


平成251128

日本組織内司法書士協会

会長 堀江泰夫

 

組織内司法書士に関する司法書士法改正要望事項

 

 司法書士法改正要綱案策定に関する意見募集について、日本組織内司法書士協会を代表して、以下のとおり意見を表明する。

 

1.概要

 当協会は、「組織に所属する司法書士」を許容する司法書士制度を目指しており、そのために障壁となる以下の点につき、司法書士法の改正を要望する。

 なお、これら以外で障壁となりうる、独立性や守秘義務等に関する諸論点は、司法書士法の改正によらずとも、司法書士倫理規程、会則もしくは運用で対応可能な問題であるため、ここでは触れない。

 

2.改正要望事項

(1)依頼に応ずる義務(司法書士法21条)

 ・意見

 依頼に応ずる義務(司法書士法21条)を廃止すべきである。

・理由

依頼に応ずる義務は、独占業務を担う資格者として、公共的役割を担う職責を負うことを明らかにする点で一定の妥当性を見出すことはできるが、以下の理由からその正当性には疑問がある。

①報酬自由化により実質的に空文化していること(すなわち、各司法書士が自由に設定した報酬に依頼者が合意できなければ、当該司法書士は依頼を拒絶することができる訳であり、実質的な義務付けは現制度下では不可能)

②依頼に応ずる義務を設けた理由の一つである司法書士業務の定型性・非創造性については、昨今の司法書士業務の専門化・複雑化により、その正当性を失っていること

③同じく司法書士業務である簡裁代理関係業務については、依頼に応ずる義務が課されていないこと

④同様に独占業務を有する他士業(弁護士、公認会計士、税理士、弁理士や海事代理士等)にこのような義務がないこと

⑤他士業の兼業が広く認められている現在においても、業務多忙が受託拒絶の正当事由にあたると解されていること(すなわち、兼業する他士業の業務が多忙で司法書士業務を断ることが正当事由として容認されている)

⑥情報化社会の進展により、依頼者には各司法書士の選択の幅が広がっており、依頼に応ずる義務の必要性が低下していること

  また、関連する論点として、司法過疎支援として司法書士会等から援助を受けている司法書士とその他の司法書士が、依頼に応ずる義務に関して差がないことも疑問がある。

 

(2)日本司法書士会連合会による登録抹消(司法書士法1611号)

 ・意見

日本司法書士会連合会による登録抹消事由から、「引き続き二年以上業務を行わないとき」(司法書士法1611号)を削除すべきである。

 ・理由

 司法書士が引き続き2年以上業務を行わないときに日本司法書士会連合会がその司法書士登録を抹消できるとする本規定は、実質的に依頼に応ずる義務を担保するために規定されたものといえる。しかしながら、依頼に応ずる義務が(1)に述べたとおり、自由報酬との関係で正当性を失っている現在においては、本規定が存在する理由はないと考える。したがって、本規定の廃止を要望する。

 

(3)事務所設置義務(司法書士法20条)

 ・意見

  事務所設置義務(司法書士法20条)を「自己の名において依頼に応ずる場合の義務」へ変更すべきである。

 ・理由

 事務所設置義務は、依頼に応ずる義務に関連して、広く国民に対して依頼する機会を確保することと、守秘義務の観点から書類等を一箇所に集めその散逸を防ぐことを目的とするものと考えられ、その妥当性は十分に理解できる。しかしながら、いわゆる「使用人司法書士」のように、独自の事務所を設置しているとは言い難い司法書士が容認されている現状に鑑みると、すべての司法書士に一律に事務所設置を義務づける現行の制度は、既に形骸化しているものと思われる。また、(1)で述べたとおり、依頼に応ずる義務が現在において正当性を有するか疑問であることからすると、すべての司法書士に一律に事務所設置を義務付ける意義は疑問であると考える。

すなわち、使用人司法書士及び組織内司法書士(ただし、自己の名において司法書士業務を受託することを予定しない者に限定される。)については、事務所設置義務を課す意味はなく、一部実態にそぐわない現状があることや、さらにこれにより組織内司法書士の活躍が制約される現状を鑑みると、本規定の適正化を検討すべきである。

 

以 上