建設会社勤務
平成28年合格、平成29年登録
<司法書士を目指した理由>
過去、身内の遺産争いを近くで見ている中で、法律を知らないという事によって不利益を生じても、それは基本的に自己責任であるという事を実感したことから、最低限の教養として民法(主に親族法を)学んだ事がきっかけです。そのため当初は資格を取得するという事は考えていませんでした。しかし理解が深まるにつれ、法律の奥深さと法律系資格の中でも特に司法書士というものに魅力・やりがいを感じたことから司法書士を目指しました。
現在、私が一般企業に属している理由としては、広範かつ大きなプロジェクトに関わることに価値があると考えたからです。登記申請等の司法書士の独占業務はある種の聖域であると思っており、もちろんそこでも司法書士間の競争があるので、安穏とできるわけではないと思っていますが、個人的に思う事として司法書士はその聖域の外にこそ「無限の可能性」が秘められているのではないかと考えています。
<現在の仕事内容・所属組織はどのような職種・業種ですか>
ゼネコン(建設)業界で、事業開発(新規事業への取り組み)を行っています。建設業は産業構造が他業界より古い(硬直化している)と言われており、その分、新領域への参入や業態転換が苦手とされています。
事業部における私の役割は、主に新規事業の企画・立案や当該事業に取り組むに当たりリスク評価を行うことです。新規分野の取組みには事業採算性等の定量的評価の他、想定されるリスク要因の分析を行う必要があります。リスク要因は発注者と締結する基本協定や実施契約書を事前に洗う事で軽減・回避できる部分が多く、その後の発注者側との対話によって検討及び意見書等の提出を経て、リスク評価を行います。
<社内で司法書士のスキルが行かされる場面>
企業人一般として社内規則・ルールという壁にぶつかる方もいらっしゃると思います。
上記に挙げた新規事業の業務には直接関係しませんが、例えば一部上場等大きな規模の企業になると、決裁基準やコーポレート・ガバナンスの仕組みが複雑化します。
しかし、各種手続法に慣れ親しんでいる我々にとっては、社内の複雑なルールに対しても、さしたる拒否反応も起きないであろうことから、決裁基準の改定やコンプライアンス規則の策定等、ルールの運用管理側として力を発揮する事もできるでしょう。現在の企業における(企業行動憲章等で規定される)行動規範の原理原則は、憲法・民法・会社法の影響を受けて成り立っています。法律知識を直接要しない社内ガバナンスの構築業務であっても、ロジカルな思考力に加え、法律の原理原則を身に着けている我々にこそ当該分野での活躍の場が開かれているのではないでしょうか。
<司法書士という資格が今の仕事にどのような影響を与えましたか>
(私は登録をしていることから)名刺交換の際に司法書士の肩書によって公共・民間問わず信頼されやすい反面、無意味に期待のハードルを上げられることがあります。自分の勉強不足で一定レベルの知識レベルを維持できていない領域も多いですが、司法書士の名に泥を塗らないようにスキルアップは常に行っています。
また、気軽に法律や契約について相談できる対象として、同僚、上司からの問い合わせに対応する機会が多くなりました。一般的に社外の顧問弁護士や司法書士に対しては気軽に質問できない雰囲気があり、仮に質問しても一般的な回答しか得られなかったというのは、皆さんも経験した記憶があるかと思います。商習慣や業務の実態を内側から理解している社員だからこそ、質問の意図を汲み取って回答してもらえるというのは、質問者側にとって非常に大きいメリットではないでしょうか。特に私は法務部の所属ではないので、質問したことが契機になり、事案がおおごとになるケースも起こりにくいという点も、問い合わせや相談が多かった一因と思います。このように、資格がきっかけでこれまで仕事上で関わりのなかった社員ともつながりを持てるようになったのも、司法書士という資格ならではではないでしょうか。